こんにちは。
一社)日本アート教育振興会の河野です。
最近暖かな日が続いていますが
花粉症でティッシュが手放せない日々です。
いまテーブルには箱ティッシュを使い切ってしまい、
取り急ぎ
トイレットペーパーがおいてあります。。。。なんてことでしょうか。。
鼻セレブがほしいこの頃です。
さて、突然ですが
あなたが“
最後の晩餐”に食べたい料理はなんですか?
お寿司?
ステーキ?
ピザ?
スイーツ?
私は母の作ったコーンスープでしょうか。
骨付き肉でだしを引いて、玉ねぎは原型がなくなるくらいまで煮込んで。
具材はコーンにひき肉。
昔は誕生日によくお願いして作ってもらった記憶があります。
あなたが食べたい最後の晩餐は?
今日はそんな問いから始まる、ちょっとお腹が空きそうなテーマ。
「アートに登場する“食べ物”たち」に注目していきましょう!
1. レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》
レオナルド・ダ・ヴィンチがミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂に描いたこの壁画。
描かれているのは、キリストと十二使徒が食卓を囲む「最後の晩餐」の場面です。
作品は、キリストが「この中に裏切り者がいる」と告げた瞬間を捉えています。
使徒たちはそれぞれ驚きや戸惑いの表情を浮かべ、
静かな緊張が画面全体に広がっています。
テーブルの上には、パンとワインが並びます。
これは、キリスト教における「聖餐」の象徴。
パンはキリストの肉体、ワインはその血を意味し、
後のキリスト教の儀式にもつながっていきます。
この作品が食堂に描かれたという点にも注目したいところです。
修道士たちが食事をとる空間で、キリストと弟子たちの“食卓”が描かれる。
日々の営みと宗教的な意味合いが静かに重なり合う場所となっています。
2. フランス・スナイデルス《静物画》
17世紀のフランドル地方で活躍した画家、スナイデルスは、豪華な食材が溢れるように描かれた静物画
で知られています。
彼の作品には、果物、野菜、肉、魚、パン、ナッツなど、多種
多様な食材が描かれており、それぞれがきわめて写実的で、まるで実際にそこにあるかのような存在感を放ちます。
この時代、静物画は「ヴァニタス(虚栄・はかなさ)」という
テーマを含んでいることが多く、豊かな食卓の裏には“死や腐敗、時間の流れ”といったものが暗示されています。
例えば、熟れすぎた果実、潰れたパン、虫の止まった果物などが、それを象徴するモチーフ。 「人生の豊かさと、終わりへの気づき」
を同時に描く、ある種の哲学的な食卓です。
3. ポール・セザンヌ《りんごのある静物》
セザンヌは19世紀フランスのポスト印象派を代表する画家。
彼は、何十枚ものリンゴを描いたことで知られています。
セザンヌにとってリンゴは、単なる果物ではなく、色・形・空間のバランスを探るための理想的なモチーフ
でした。
彼のリンゴの絵には陰影があり、立体感がありながらも、どこか安定しない独特な遠近感が感じられます。 これは彼が、「自然を円筒、球、円錐によって捉えるべき」と考えていたことにもつながります。
見る者の感情や記憶によって、“おいしそう”と感じる人もい
れば、“構造の美しさ”に魅了される人もいる。 セザンヌの静物画は、見る人それぞれの感覚を引き出す「味わうための絵画」なのかもしれません。
4. ヤン・ダヴィス・デ・ヘーム《静物 – 朝食》
オランダの画家ヤン・ダヴィズ・デ・ヘームは、17世紀オランダ黄金時代の静物画を代表する存在です。
彼の《朝食》では、豪華な銀器、ガラスのグラス、パン、チーズ、果物
などが美しく並べられ、特にレモンの描写が印象的です。
レモンは皮をらせん状にむかれ、鮮やかな黄色が光を受けて美しく輝いています。 当時、レモンは高級品であり、同時に「人生のはかなさ」「快楽の一瞬」を象徴
するモチーフとして使われていました。
一見華やかで豊かな食卓に見えながらも、その裏にある人生観や死生観が静かに漂っている。
それがデ・ヘームの作品の魅力です。
5. 草間彌生《南瓜》
現代アートの世界で、食べ物を象徴的に扱った作品といえば、草間彌生の《南瓜》が思い浮かびます。
彼女にとってカボチャは、子どものころから親しみを感じていた存在。 「素朴で、人間味があって、ユーモアがある」
と語っています。
南瓜の形や色彩、水玉模様は、彼女が抱える幻視体験や精神世界とも深くつながっており、 この野菜は“内面の象徴”として、彼女の作品に繰り返し登場します。
つまり、これは単なる食材の描写ではなく、草間彌生という一人の人間の感覚世界そのもの
となっています。 見る者にとっても、どこか懐かしく、でも不思議な感覚を呼び起こす作品です。
6. アンディ・ウォーホル《キャンベルスープ缶》
ポップアートを代表するアンディ・ウォーホルが描いたのは、アメリカのスーパーに並ぶ「キャンベルスープ缶」。
ウォーホルは、このスープを毎日のように飲んでいたと言われています。 そんな日常の象徴を、シルクスクリーンという技法で何十種類も繰り返し描いた
のです。
この作品は、「大量生産」「消費社会」「オリジナルとコピーの境界線」
など、現代社会を映し出すメッセージにあふれています。
身近なもの、ありふれたものをアートとして提示することで、 私たちが「何を美しいと感じるか」を問い直す作品でもあります。
いかがでしたでしょうか。
今日は「アートに登場する食べ物」をテーマにお届けしました。
果物も、スープも、パンもただ“おいしそう”というだけでなく、
そこには画家たちの人生観や、時代の空気、そして見る人の記憶が重ねられています。
次に美術館で絵を眺めるとき、もし“食べ物”が描かれていたら、
ぜひその意味や背景にも思いをめぐらせて見てください。
そこには、見た目以上の味わいがあるかもしれません。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。