こんにちは。
一社)日本アート教育振興会の石川です。
先日のメルマガでは、久しぶりの研究友達の連絡を契機に、
私が去年の3月に訪れた台湾ビエンナーレについて
お話ししました!
文字情報から想起される作品を
楽しんでいただきましたね。
【美術館探訪 vol.1-2】では、
台湾ビエンナーレでであった作品について、
私の【みえかた/解釈】をご紹介します!
<作品を思い出してみて下さい>
以前お話しした作品は、こんな作品でした。
作品は立体作品で、
一見「フラット(集合住宅)」。
横幅は、380cm
高さは、180cm
奥行きは、25cm。
側面には無数の小さな窓が規則的にびっしり!
各窓から煌々と光が漏れ出しています。
人っこ一人もいません。
そして、生活困難なほど狭い部屋の中を覗いてみると、
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・ドローイング調の大作と彫刻が置かれた部屋
・レオナルド・ダ・ヴィンチの
《サルバトール・ムンディ》が飾られた部屋
・多数の家族写真と思われる写真が
壁いっぱいに飾られている部屋
・壁を同じ時間を示した時計で埋め尽くしている部屋
・大きな鳥籠に占拠された部屋
・本で溢れた部屋
・黒い花瓶に刺された黒い花々が中心に置かれた部屋。
==========
同じ壁紙、
同じような部屋の広さ、
それでも一つとして同じような部屋はありません。
全ての部屋には、格子窓が設置されています。
建物の外観は【黒】
窓枠も、格子も【黒】
色彩はすべて光の溢れる部屋の中。
<【鑑賞メモ】(抜粋)>
この作品について、
当時、私が残した「鑑賞メモ」をみてみましょう。
この鑑賞メモでは、
【私の作品に対する感想・解釈】が綴られています。
解説も読んでいません。
知識ゼロ、己の「観察」から紡いだ【私の解釈】です。
【鑑賞メモ】(抜粋)
・一人/プライベート
・好きなもので溢れた小部屋
・おひとり様の狭い部屋
・ものが多い
・ものが少ない
・極端なモチーフの数
・無人
・寂しいの?
・思考の枠組みからでたい/でれない(格子窓)
・これは部屋ではないという可能性
・「一緒にいたい/ほっておいてほしい」
というアンビバレントな感情に縛られた<何か>の表象
<『部屋』が持つ【ぐにゃぐにゃ】>
部屋とは、
ある意味私たちの「嗜好/趣味/考え/価値観」が
少なからず反映されているかと思います。
・アンティークが好き
・ものは少ない方が美しい
・整理されている空間でありたい
・大きな本棚がほしい
自分がいかに「リラックスできるか」
そのために、どんな空間でありたいのか。
そんな要素も、
「部屋」には含まれていると思います。
そう考えた時、
『部屋』とはたんなる空間ではなく
『私たちの思考が投影されている空間』と
いうこともできるかと思います。
そんなことに気づかせてくれたのが、
この作品でした。
そして私たちはつねに
様々な【矛盾】を抱えていると思います。
それは【行動】でも【感情】でも同様です。
「これやりたい/めんどくさい」
「好きだけど、嫌い」
そんなアンビバレントな感情も行動も、
全てを受け止めてくれるのが、
思考の投影空間である『部屋』なのかもしれません。
「誰かと一緒にいたい」
「でも一人でいたい」
そんな部屋の主人たちの声を
聞いたような気がしました。
<『格子窓』が持つ【ぐにゃぐにゃ】>
でもきっと、このフラットの住民は
「外に出たくてもでれない」のでしょう。
・黒い建築
・黒い窓枠と格子
・格子窓
・人一人、やっと入れる空間
・生活感が感じられない空間
ここはまるで牢獄のようです。
同じもモチーフ反復、
価値あるものの描写、
占拠された空間
これらからは【執着】
を感じさせられます。
「ここでいい」
「これがいい」
そんな必要以上の執着から生まれた格子窓。
現実世界の『部屋』からも
思考の中の『部屋』からも
抜け出す術を、住民は知らない。
なぜなら、
格子の窓以外、どんな窓があるか知らないから。
「井の中の蛙、大海を知らず」
でもまって、
無人の住民はどこへ?
<作品の解釈は無限に広がるストーリー>
さて、いかがでしたか?
見返してみながら
「私の解釈、とっても救いようがない!!笑」
私のみえたものは、
一種のホラー的側面が強かったですね笑。
これはこれで面白い。
あなたが思い描いたストーリーと
私の紡いだストーリーは、
どんな点で類似していて、
どんな点で違っていましたか?
作品の解釈に正解・不正解はありません。
だから【ぐにゃぐにゃ】なのです!
定まったものなんて、何もありません!
作品が持つストーリーは無限です。
ぜひあなたが紡いだ解釈を
共有してくださったら嬉しいです♪
<ちょこっと紹介>
弊会で開催している対話型アート鑑賞の無料体験会を
開催中です!
お気軽にご参加くださいませ♪
ちなみに、私たちが想いを馳せていた作品は
アディティア・ノヴァリ(Aditya Novali)の
”The Wall: Asian (Un)Real Estate Project 2023”
という作品。
気になった方は調べてみて下さい!
ではまた、次の記事でお会いしましょう♪