新しい時代を描く・創造する 〜モネ:シリーズ3〜

こんにちは!
日本アート教育振興会の石川です。

芸術の秋♪
日本各地で面白い展覧会が開催されていますね!

北から南まで、
見に行きたい展覧会が多くて困ってしまいます!

「新しい時代を描く・創造する 〜モネ:シリーズ〜」
今回で最終回です!

モネの足跡をたどりながら、
シリーズ1では、初期作品を
シリーズ2では、印象派の誕生をみてきました。

・1840〜1859年:少年・修行時代
・1860〜1871年:出会いの時代
・1872〜1882年:印象派の出発
・1883〜1898年:連作の時代
・1899〜1926年:睡蓮の時代

シリーズ3では、いよいよモネの代名詞「睡蓮」
にも注目していきます。

どうしてモネは同じような絵を
何枚も描いているのか??

今日は
・1883〜1898年:連作の時代
・1899〜1926年:睡蓮の時代
からモネの晩年を紐解いていきます!

<シリーズ2のおさらい>
シリーズ2で、
モネは流行のドレスや当時の人がよく訪れていた観光地、
そして19世紀を代表する列車など、
まさに「当時のアイコン(=モデルニテ)」に
注目して作品を制作していました。

しかし1883年以降、その態度は大きく変化することになります。
その例としてモネの描いたサンラザール駅を紹介しました。

モネは、「鉄道」という近代の代表的なアイコンを
描きながら、その関心はその場に立ち込める「空気感」といえます。

そして
モネはその後、この「空気感」を描こうと
同じ場所を何枚も描く「連作」に着手し始めます。

<連作の時代>
1888年には初の連作「積みわら」(計25作)を手がけ、
1891年には「ポプラ並木」(計23作)の連作に、
1892年には「ルーアン大聖堂」(計20作)の連作を描き始めます。

モネは「積みわら」について、モネはこのように話しています。

【モネの言葉】
「制作に励んでいます。
『積みわら』のさまざまな効果の連作に夢中なのですが、
近頃は陽が早く沈むので、追いつくことができません。
しかし描き進めるにしたがって、
私が求めているもの
ー『瞬間性』、
特に包むもの、
いたるところに輝く均一な光が分かるのです」

この言葉からもわかるように、
モネは積みわらを描くなかで
「『瞬間性』、
特に包むもの、
いたるところに輝く均一な光」を
「私が求めていたもの」だと言及しています。

「『瞬間性』、特に包むもの、いたるところに輝く均一な光」
とは一体何のことでしょう。

この謎を解く鍵は、「積みわら」の修作にあります。

「積みわら」の輪郭の上から、ホワホワとした薄い膜のようなものが
描かれていることにお気づきいただけたでしょうか。

この薄い膜こそが、モネが発言していた
「特に包むもの、いたるところに輝く均一な光」であり
光の膜ということができます。

このことから、モネは「積みわら」を生活の要、
生きる上で重要な労働という従来のイメージではなく、
「積みわら」に均一に降り注ぐ光の輝きを描きたかったことがわかります。

そして光は、生命の根源と言えます。

モネは生活の要である「積みわら」に生命の根源を見つけたんですね。

<光を捉えたい>
このように、モネは3つのモチーフの連作を描いたわけですが、
この連作を通してモネは一体何を描こうとしていたのか?

モネは時間と自然によって移りゆく光を捉えようとして、
何枚も同じような構図、同じモチーフの作品を制作しました。

このようにモネは大きな変化をへて、
いよいよ、最後のパート、睡蓮の時代に突入していきます。

<睡蓮の時代>
「睡蓮」の連作の大半はジベルニーにあるモネの家の池にて描かれました。
家には広大な敷地が広がっていて、そこには溢れんばかりに様々な色の花が植えられています。

当時モネは、庭師を雇うことはなく自分の手で庭いじりをしていました!

睡蓮の連作は
「第一連作」と「第二連作」に分かれています。

第一連作から第二連作にかけて、モネは描き方を変えたわけですが、
モネは第一連作と第二連作で何を描こうとしたのでしょう?

「睡蓮」第一連作

「睡蓮」第二連作

描かれているモチーフに注目してみましょう。

<第一連作>
画面は庭全体をとらえながらも、
空が描かれていないことから、視線が地面に向いているといえます。

そこからモネが、庭全体に焦点を当てながらも、
睡蓮の池に比重がよっていることがわかります。

<第二連作>
第二連作ではもはや庭全体を描いておらず、
水面に一点注目しています。

水面に映る物に焦点を当てると、水面に浮かぶ睡蓮や、
水面に映る雲、柳の影などが描かれています。

つまり
第一連作ではいままでと同様に風景を描いているのに対し、
第二連作では、もっぱら水面に心奪われているといえます。

<移りゆく光と時間を描く>
第二連作でモネは、たゆたう水面反射する光に魅了されました。

雲の流れ、
水面の動き、
睡蓮の状況などを描き続けることで、
モネは移りゆく光と時間を記録していたんです。

印象派誕生の際、モネは時代の「移ろい」に注目していました。

この時代の移ろいやすさ、というのは
過去、現在、未来に進む時間軸の概念であり、
過ぎ去ってゆく時間の概念と言えます。

それに対して、
自然界では時間はただ進み去っていくのでなく循環していると言えます。

春が来れば夏が来て、夏が来たら、
秋、そして冬が来たらまた春が来ます。

そして庭いじりに傾倒していたモネはこの、自然の摂理にも魅了されていたと言えます。

つまり同じモチーフを描き続け、移りゆく光と時間を記録することは、
モネにとって循環する時間の記録という意味なんです。

<モネが描こうとしたもの>
ここまで、モネの経歴を大まかに追ってきました。
いかがでしたか?

モネは何を見つけてきたのか。
そして何を描いてきたのか。

画家としてのキャリアをスタートさせた時から、
一貫して「戸外」での制作にこだわったモネ。

戸外に溢れ出る光を描こうとした
モネの執念が、後のアーティストにも影響を及ぼし
その結果として、新しい時代をつくったといえます。

美術館でモネの作品を見た時、
少しでも光や時間の表現に意識を向けてみてください。
そしてほかの人と共有してみてください。

あなたにしか見出せない「モネの光」があるのと同様に、
きっとその人にしか見えない「モネの光」があると思います。

本日も最後までお読みくださりありがとうございました!

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