「着飾る」ことの哲学(1) 〜ルネサンス美術から見る「私」〜

こんにちは。

一社)日本アート教育振興会の石川です。

先週国立西洋美術館で開催中の展覧会

「西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで

サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」を見に上野へ!

 

楽しみにしていたのですが、なんと悲しいことに、

東京は大雨。

 

この季節、

急に暖かくなったり、寒くなったりと

服装を決めることに苦労しませんか?

  

朝、クローゼットの前に立って

「今日はどんな服を選ぼうか」。

 

気温は?

 

自分の今日の予定は?

 

自分の気分は?

 

シンプルなシャツにするか、

それとも少し華やかな色のものにするか。

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~~~

~

 

この瞬間、

私たちは無意識のうちに

「自分」という存在をどのように表現するか

を決めているといえます。

  

 

ファッションとは、単なる実用でありません。

自己表現の最前線です。

 

 

この「着飾る」という行為を、

美術史の視点から眺めると、

私たちの服装が

どれほど社会や文化と結びついているかが見えてきます。

 

 

ルネサンスの肖像画に描かれた豪奢な衣装、

コルセットによる束縛からの解放、

シャネルが生み出したモダンエレガンス——

 

 

それらはすべて

「人間がいかに自らを装い、

何を語ろうとしてきたか」
の歴史です。

 

 

【ルネサンス——衣服は「教養」と「権威」を語る】

 

 

少しルネサンス絵画を見てみましょう。

 

ルネサンス(14〜16世紀)は

「人間の美」を再発見した時代でした。

 

そして、その美は「衣服」にも大きく表れています

 

 

絵画の中に描かれた服装は単なる装飾ではなく、

権力・知性・道徳・理想の美を表現する

「コード(記号)」として機能していました。

  

   

たとえば、

ブロンズィーノが描いたメディチ家の貴婦人たち

 

彼女たちは繊細な刺繍と宝石を散りばめたドレスを

纏っています。

 

これは単なる美の追求ではありません。

 

 

豪奢な刺繍と宝石をふんだんに使った

豪奢な衣装は財力と教養の証

 

シルクやベルベットのドレスは、

それを身につける者が

いかに洗練された文化の担い手であるかの提示

 

とくに、黒と金の衣服は「威厳」と「格式」を表す色
でした。
 

 

ちなみに、、、

2016年、東京都庭園美術館で

メディチ家のジュエリー・肖像画を紹介する

日本初の展覧会が開催されておりました!

 

当時、どうしても行くことができず、

母に「図録だけでも買ってきて!!」と懇願。

 

今も図録を片手に(笑)

 

  

そしてルネサンスのファッションといえば

そのほか、ティツィアーノが描いた

ハプスブルク家・皇帝カール5世

 

鎧とともに深紅のマントを着用し、

軍事的支配者としての威厳を誇示しました。

 

【「私は○○である」という社会的認知の表現】

 

ここからも、ファッションは単なる装飾ではなく、

「私はこの時代の知性と権力を持つ者である」

という無言のメッセージでした。

 

 

しかしその一方で、

豪華さとは真逆の「シンプル/繊細さ」さから

「知性と創造性」を表現したアーティストも。

 

 

例えば

サンドロ・ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》

 

本作に登場するヴィーナスの髪やドレープは、

当時のフィレンツェの貴族女性が憧れた

「優雅な美」を映し出しています。

 

 

またラファエロの《ラ・フォルナリーナ》では、

繊細なレースと宝飾品が「富」と「品格」を象徴しました。

 

 

ルネサンス期の人々は、

ファッションを「自己表現の芸術」と考えていました

 

華やかな服/繊細な服は、単なる贅沢ではなく

「私は何者なのか」を語るツールだったのです

 

そして時は流れ、

コルセットの開放、

ジュエリーの美的価値の高まりへ。

 

次の記事では、

19世紀〜現代における「ファッションのあり方」を

一緒に堪能していきましょう!

 

今日も最後までご覧くださりありがとうございました。

 

では、次の記事でお会いしましょう。

 

 

 

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