こんにちは。
一社)日本アート教育振興会の塚越です。
庭に植えている落葉樹が、すっかり緑豊かな姿になりました。
ついこの間まで、冬の名残を感じていたのに、
いつの枝いっぱいに葉が茂り、季節の移ろいを感じます。
じっと見ていても、
もちろん葉がニョキニョキと伸びているところなんて見ることはできません。
でもある日ふと、
昨日より少し大きくなっていることに気付くのです。
成長の瞬間は、
私たちの目には映らないことが多いのかもしれません。
けれど確かに、見えないところで、静かに育っている。
これは、人の心や学びにも、よく似ている気がします。
すぐに成果が出ないと「意味がない」と感じたり、
自分だけ取り残されているように感じた経験が、
あなたにもありませんか?
でも、本当に大切な変化は、いつも静かに、
目には見えない場所で起きているのかもしれない。
そう思います。
以前読んだ『13歳からのアート思考』という本の中で、
私にとって印象的な部分があります。
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”タンポポ”を思い浮かべたとき、
ほとんどの人は地上で目にする黄色い花と緑の葉をイメージする。
でもそれはタンポポの極々一部であり、
土の中ではまるでゴボウのように、時には1メートルにも及ぶ根が続く。
しかも黄色い花が見られるのは、
1年のうちたったの1週間。
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時間的にも、空間的にも、
タンポポの大半を占めているのは、目に見えない地下の部分、
ということです。
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書籍の中では、
タンポポとアートを絡めてお話が進んでいきますが、
書籍の冒頭に登場するこのストーリーが今も心に残っています。
アートって、すぐに意味がわからなくても、
「なんだろう?」と考えながら向き合っているうちに、
ふと何かが見えてくることがありますよね。
その姿勢は、日々の私たちとも重なるように感じます。
すぐに答えが出なくても、ちゃんと内側では育っている。
落葉樹が冬を越えて芽吹くように、
私たちにも「目に見えない育ちの時間」があるのだと思います。
「今は土の中にいる時間なんだ」
そう思えたら、心はずっと軽くなるかもしれません。
むしろ、しっかりと根を育てた植物の方が、
きっと強く逞しく、大輪の花を咲かせるのではないでしょうか。
アートを観るときも、植物を育てるときも、
私たちは“すぐに答えが出ない時間”と共に過ごしています。
その時間の中で、何を感じるか。
どんなふうに自分と向き合うか。
きっとそんな姿勢こそが、
日常の中で本当に大切にしたいものなのかもしれません。
今、あなたが向き合っていることは、
すぐに芽が出なくても、ちゃんと意味がある。
たとえ見えなくても、あなたなりの根が少しずつ育っているのだと思います。
慌ただしい毎日の中でも、
どうか自分の“育ち”を信じてあげてください。
そして、時にはアートにふれて、心の余白をつくってみてください。
答えのない世界に向き合うことは、
「まだ芽が出ていないもの」
への信頼にもつながっていくはずです。