模写で気づいた、北斎の波の“秘密”とは?

 


こんにちは。

一社)日本アート教育振興会の河野です。

絵をまねして描く「模写(もしゃ)」


みなさんは、この言葉にどんな印象を持っていますか?

「美大生が練習としてやること?」
「オリジナリティがない?」

もしかすると、そんなふうに思う方もいるかもしれません。

でも実は、模写はとても奥深い行為

 


ただ形をなぞるだけでなく、

 「感じる力」

「観察する力」

「自分自身を知る力」

を育ててくれる、
豊かな学びの時間なのです。

 

ヨーロッパへ行くとよく美術館の中でも、模写をしている人を見かけます。

今回は、そんな「模写」がもつ魅力をご紹介します!

 

私たちは日々、たくさんのものを「見て」暮らしています。

 でも、
「ちゃんと見る」ことって、意外と少ない

のではないでしょうか。

 

名画を模写しようとすると、

色や形、光の当たり方、影の描き方など、

細かいところにたくさんの発見が生まれます。

「こんな色が使われていたんだ」
「ここだけ線がゆれてる」

模写はこの“気づく目”を育てることができるんです。

 

 

先日子供達とテレビを見ていたら、
BSテレビで
葛飾北斎の特集番組が放送されていました。

 

 その中で、とある画家が『神奈川沖浪裏』の波を模写する場面があったんです。

一見すると大胆で装飾的な北斎の波。
しかし模写してみると、次のような気づきがあったと言います。

 

「普通、波はこう描かない。でもだからこそ動きが生々しく見える」
「この線はどこから始まって、どこへ向かっているのか?」
「なぜ北斎は、この波頭を“手のような形”で描いたのか?」

 

模写を通して、
ただ見ているだけでは気づけなかった工夫や意図、
魔法のような線の使い方
が浮かび上がってきたのです。

 

描いてみて初めて、
「ここに命が宿っていたんだ」と感じる。

それこそが、模写の醍醐味です。

 

このように模写では、作品を「深く見る」ことが求められます。

色の微妙な違い、線の揺れ、構図の意図、光の動き…。

それらを丁寧に追いかけていくと、

今まで「知っていた」はずの絵が、
まるで初めて出会うもののように立ち上がってきます。

 

これは、日常にもつながる力。
模写は、
丁寧に深く見る目を静かに育ててくれます。

 

この力は、仕事や教育の場でもとても大事な力です。

相手のちょっとした表情の変化や、子どもの小さなサインに気づくこと。

注意深く見ることが、信頼や創造的な関係性につながっていきます。

 

 

 

また、親御さんや先生は、
子どもたちに「自由に描いてごらん」と言うことはよくあるかと思います。

 もちろん自由な表現は大切。

でもときに、「どう描いていいか分からない」と戸惑う子どももいますよね。

 

そんなとき、「まねしてみるのも楽しいよ」と伝えられる大人がいると、

子どもは安心して一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

 このように模写は教育や子育ての場でも、大きな力を発揮してくれます。

模写は、「自由」と「手本」のあいだにある、

ちょうどいいバランス
を教えてくれます。

何かを参考にしながら、自分の表現に少しずつつなげていく。

そのプロセスは、子どもだけでなく、
教える側の大人にとっても新しい
気づきになります

 

模写を続けていくと、
「これは少し、自分の線かもしれない」
と思う瞬間が訪れます。

誰かの絵をなぞっていたはずなのに、
そこに
”自分”がにじみ出てくる

「私はこっちの色の方が心地いいな」

「この筆の運び、自分のクセに似てるかも」

そんな気づきが、自分の感性の輪郭
を教えてくれます。

 

葛飾北斎の波をなぞることで、
「見る目」が開き、「感じる力」が深まり、
「自分の輪郭」が見えてくる。

模写とは、まさに対話の時間なのかもしれません。

 本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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