こんにちは。
一社)日本アート教育振興会の河野です。
子育てをされている方や、教育に携わっている方は
日々、子どもを思って一生懸命に向き合っておられるかと思います。
育て方を学んだり、子どもの発達を調べたり、いい教育を探したり、
時には「これで合っているのかな」と悩んだり……。
私も多感な中2男子と小4男子がいるので
痛いほどお気持ちわかります。
昔、本を読んでいてハッとさせられる言葉がありました。
子育ての“主役”は誰?
という言葉。
私は割と厳しい家庭の末っ子として育ちました。
父の得意技は星一徹に負けないぐらいのちゃぶ台返し(笑)でしたし、
兄も姉も優秀でした。
そのためか親や兄弟の目を気にして
「ちゃんと育てなきゃ!」
と思い込んでいたんです。
もちろん、その気持ちはとても自然で、大切なものです。
しかしその思いによって
子供だけでなく自分のことも苦しめていました。
では、ここで一つ問いかけてみます。
「ちゃんと育った子」って、どんな子でしょう?
成績が良くて、礼儀正しくて、大人の言うことをよく聞く子?
それとも、自分の思いを持って、自分らしく歩める子?
正解はありません。
でも確かに言えるのは、
子どもは“親の作品”ではない
ということ。
親の「こうあってほしい」という理想から、
少し距離をとってみたとき、
初めて、目の前の子ども自身の本当の姿が見えてくることがあります。
教育も、しつけも、習いごとも、もちろん大切なことです。
けれどそれ以上に、子どもが本当に求めているのは
「大人が自分を見てくれている」という安心感。
「一緒に笑ってくれる人がそばにいる」という安心感。
そうした温かなまなざしと関わりではないでしょうか。
子どもは、大人が思っている以上に繊細で敏感です。
親のイライラや不安、焦りといった空気を、
言葉にしなくても感じ取ってしまいます。
だからこそ、親が心から笑っている時間は、
子どもにとって
何よりの「安全基地」になります。
私たち大人は、とかく「理想の育て方」に近づこうと頑張ってしまいがちです。
でも、理想を追いかけすぎるあまり、
“今、目の前にいる子ども”を見失ってしまっては本末転倒ですよね。
大切なのは、目の前の子どものありのままを見つめること。
等身大の成長や変化に気づき、その子の中にある力を信じること。
それが、子どもにとって何よりの栄養になり、
自己肯定感や信頼感の土台を育んでいくのだと、心から感じています。
ある夜、息子と並んでテレビを見ていたときのこと。
画面には、水墨画のアーティストが、
白い紙に墨を流し込むシーンが映っていました。

計算されたようでいて、偶然ににじんだその模様が、なんとも言えず美しかったんです。
息子がぽつりと、
「これ、偶然なんだよね?なんかカッコいい」
とつぶやきました。
私は「そうだね。思い通りじゃなくても、魅力的な“作品”になるんだね」
と返しました。
そのとき、彼が納得しながら笑ってくれたのが嬉しくて、今でも心に残っています。
子育ては、どこかアートに似ています。
はじめは「こうしたい」と思っていても、
色がにじんだり、混ざったり、はみ出したり。
今日の会話、今日のにじみ、今日の笑い。
ありのままの子供を大切に感じながら、
一枚の絵を親子で一緒に描いている。
そんな感覚を忘れずにいたいなと思います。
今日も、最後までお読みいただきありがとうございました。