こんにちは。
一社)日本アート教育振興会の河野です。
突然ですが、
あなたは絵を描くとき、どちらを大事にしますか?
線?色?
この問いは、
実は500年以上も前から芸術家たちのあいだで交わされてきた議論なんです。
ルネッサンス期に始まった「線 vs 色」!
この論争が本格的に語られるようになったのは、
15〜16世紀のイタリアです。
アートの中心地だったフィレンツェでは、ミケランジェロのように
「形や構造をしっかり描く“線”が大切」という考え方が広まりました。
一方、ヴェネツィアではティツィアーノやジョルジョーネらが
「やわらかな“色”の重なりで、光や感情を描き出すことが大事」と主張しました。
この頃から、アートの世界では
「線=理性」
「色=感性」
という見方が生まれてきたのです。
フランスの建築家・芸術家であるル・コルビュジエは、このように語っていま
す。
「色彩は感覚に訴える。だが、線は心に語りかける。」
色は感覚を動かすパワーを持ち、
線は思考や秩序を形にする力
を持っています。
どちらも、アートに欠かせない大切な要素なのです。
では親として、先生として、
子どもたちが描いた絵を見守るときに、
どちらを大事にすればよいのでしょうか?
正解は「どちらも大切」です。
線を描くこと
で、ものの形をとらえる力や、集中力、観察力が育ちます。色を選ぶことで、自分の気持ちを表現したり、感覚
を育てたりすることができます。
たとえば、子どもが青ばかり使っていたら
「なんで青なの?」と聞くよりも
「青をたくさん使いたくなったんだね」
とありのままを受けとめる
ことが大切です。
そこには、その子なりの表現したい気持ち
があるのです。
アートは「描く」だけではありません。
「じっくり見ること」も、子どもたちと楽しめるアート体験のひとつです。
たとえば――
レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》は、
構図と線の美しさが際立ちます。モネ《睡蓮》は、色の重なりや光の印象
に心がゆさぶられます。
大人がまずアートを楽しむことで、
子どもたちにも
表現する喜びや観察するおもしろさ
が自然と伝わっていきます。
「線と色、どっちが大事?」という問いは、
500年以上前から続いてきたアートの永遠のテーマです。
でも、
大切なのは、どちらかを選ぶことではなく、
どちらの良さにも気づいていくこと。
なんですよね。
子どもたちが自由にのびのびと描くためには、
大人が「どちらも素敵だね」と見守る姿勢がいちばんのサポートになります。
線と色、どちらにもある豊かな表現の力。
アートは、正しさを競うものではなく、
自分の気持ちや視点を大切にするものです。
線と色、両方の魅力を知ることで、
きっと私たち自身の世界の見え方も、
少し豊かになるはずです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました!