そのモヤモヤ、どう言葉にする??

 


こんにちは。

一社)日本アート教育振興会の河野です。

「なんだかモヤモヤする」

「うまく言えないけど、しっくりこない」

 

そんなふうに、自分の内側にある気持ちや感覚を言葉にできないまま、
心が置き去りになってしまう瞬間は、
誰にでもあるのではないでしょうか。

 

私たちは日々、
自分の内面と向き合いながら、

他者とも関係を築いています。

 

その中で、

「自分の感覚を言葉にする力」は、

良好な人間関係や心の安定のために欠かせない土台です。

 

そしてその力は、実はアートとの対話によって育むことができます

 

とくに近年、
教育や福祉の現場で注目されているのが、

「対話型鑑賞」
と呼ばれるアートの鑑賞方法です。

 

対話型鑑賞とは、
作品の解説を聞くのではなく、

参加者同士が「自分はこう見えた」「こんなふうに感じた」
意見を出し合いながら作品を見る鑑賞方法です。

 

美術館だけでなく、学校教育やコミュニティの中でも実践され、
子どもから大人まで誰もが参加できるアプローチです。

 

そこでは「正解」は求められません。

 

感じたことや考えたことに「間違い」はなく、むしろ多様な視点こそが歓迎されます。

だからこそ、安心して自分の言葉を紡ぐことができるのです。

 

対話型鑑賞の特徴は、

「見て、感じて、言葉にする」

というプロセスにあります。

 

たとえば、一枚の絵を見て「この人物、なんだかさびしそう」と感じたとき、

それを言葉にして共有することで、
根拠を探り始め、
コーチからの問いかけでぐっと
自己探究が深まります。

 

「表情が暗いからかな」

「背景がひとりぼっちに見えるからかも」

「自分も最近似た気持ちだったからかもしれない」

 

そうやって、自分の感覚に丁寧に耳を傾け、言語化していく。

 

このプロセスは、まさに「自分との関係を深める時間」なのです。

そして、それを他者と共有することで、
「そんなふうに見るんだ」
「自分とは違うけど面白い」
と視野が広がり、
自分の感じ方にも新たな意味が加わっていきます。

 

 

対話型鑑賞で育まれる力は、
アートを楽しむ力だけではありません。

それは、非認知能力
特に
「自己肯定感」「感情の言語化力」「共感力」「柔軟な思考力」などの土台をつくります。

たとえば、自分の感覚を言葉にすることができれば、
対人関係で
「言いたいことが言えない」
「わかってもらえない」

といったストレスが減っていきます。

 

逆に、相手の言葉にも「背景にある感情」を想像できるようになり、対話が深まります

 

 

これは、ただ「話すのが上手になる」という意味ではありません。

 

大切なのは、
「自分の内側にある気持ちを、正直に・丁寧に見つめる力」

 

その力が育つほど、他者とも誠実に向き合えるようになります。

 

 

対話型鑑賞が特別な体験になるのは、
「安心・安全の場」が保証されている
からです。

 

「否定されない」「比べられない」「正解が求められない」

という空気の中で、自分のペースで思考と言葉を育てていける

 

これは、学校や家庭、職場ではなかなか得られない貴重な環境です。

 

そしてこの「安心感」は、そのまま他者との関係にも影響します。

 

人間関係の中で本音を語ったり、違う意見を聞いたりするには、
まず「大丈夫と思える場」が必要なのです。

 

対話型鑑賞は、その練習の場にもなり得るのです。

 

アートと向き合い、自分の感覚を言葉にしていくプロセスは、
やがて日常にも広がっていきます。

 

「なんか疲れてるけど、どんな気持ちだろう?」

「この出来事、私はどう受け止めていたんだろう?」

「今日うれしかったのは、どんな瞬間だった?」

 

こうした小さな“内面の問いかけ”が、
自分との関係を育て、

他者との関係にも穏やかな影響を与えていきます。

 

感覚を言語化する力は、
アートを観る力だけでなく、

「生きる力」そのものなのです。

 

現代は、正解がひとつではない時代です。

 

誰かの言う「こうすべき」に従うだけでは、
自分らしさや本音を見失って
しまいます。


そんな中で、自分の感覚に気づき、言葉にし、他者とわかちあう力は、

かけがえのない生きる力になります。

 

対話型鑑賞は、「見る目」を育てるだけでなく、
「感じる力」「考える力」「つながる力」を育ててくれます。

 

そしてその根底にあるのは、自分自身との対話です。

 

まずは、

自分の感じたことを「言ってもいい」、そしてその声をじっくり「聞いてあげる」ことを意識してみてください。

それが、自分との関係をあたたかくし、他者との関係を柔らかくする一歩になるのです。

 

あなた自身が、その一歩を踏み出すことから始めてみませんか?

今日もお読みいただきありがとうございました。

 

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