こんにちは。
一社)日本アート教育振興会の河野です。
あなたは誰かのためを思ってかけたはずの言葉が、
思うように伝わらなかった経験はありませんか?
伝えた側には善意があったのに、相手の表情が曇ってしまったり、反発されたり。
そんなすれ違いの原因のひとつに
“アドバイス”と“フィードバック”の違い
があるかもしれません。
私たちは日常の中で、
人に何かを伝える機会がたくさんあります。
仕事でも、家庭でも、教育の場でも。
その中には、相手のためを思って言葉をかける場面も多くあります。
「それなら、こうしたらいいよ」
「次はこうしてみたら?」
そんなふうに伝える言葉は、いわゆる“アドバイス”です。
経験や知識をもとに、相手にとってより良い方向を示す。
それは善意から生まれるものであり、
多くの場合、
相手の成功や成長を願って発せられます。
一方、“フィードバック”は少し性質が異なります。
フィードバックは、
「いまのあなたの行動や成果が、どのように周囲に影響したか」
「どのように見えたか・感じられたか」
を客観的に伝えることです。
過去や現在に焦点を当て、相手の気づきを促すことが目的です。
アドバイスは、未来に向けた提案。
フィードバックは、今この瞬間の振り返り。評価ではなく、観察。
どちらも相手を想う言葉ですが、その役割と効果は大きく異なります。
アドバイスは、時に相手にとってありがたい情報になる一方で、
「こうしたほうがいい」と一方的に提示されると、
押し付けのように受け取られることもあります。
特に、相手がまだ自分自身で答えを見つけたいと思っているときや、
自信を失っているときには、
たとえ善意であっても心の距離が生まれることがあります。
一方でフィードバックは、
「私はこう感じた」「ここが良かった」「こ
こは改善の余地があるように見えた」など、
主語が“私”であることが多く、
評価ではなく観察の姿勢で伝えられることが大切です。
そのため、相手は自分を責められているとは感じにくく、
「受け取って考えてみよう」
と内省につながりやすくなります。
たとえば、あるプレゼンテーションを終えた後に、
「もっと自信を持って話したほうがいいよ」
というのがアドバイスだとしたら、
「話しているとき、少し不安そうに見えたよ。声のトーンが落ち着いていて、内容は伝わりやすかったけど、もう少し自信を感じられると、もっと引き込まれると思った」
というのがフィードバックです。
アドバイスは“どうすればよいか”を伝え、
フィードバック
は“どう受け取られたか”を伝えます。
ここで大切なのは、
相手が今、どんな状態にあるかということです。
まだ自分の中で整理ができていない段階で未来の話をされると、
相手は戸惑ったり、反発したりしてしまうことがあります。
逆に、自分を客観的に見つめる余裕があるときは、
言葉によって冷静に自分の現状を把握することができ、
次に進むエネルギーになります。
また、アドバイスをする側としても、
自分の価値観や経験をもとに話すため、
相手にとって本当に必要なことかどうかを見極める視点が必要です。
自分にとっての「正解」が、相手にとっての「最適解」とは限らない
からです。
フィードバックは、その人自身が自分の行動や結果を見つめ直すための鏡で
す。
だからこそ、伝える際には「正しさ」ではなく「気づき」を届ける意識が求められます。
どちらが正しく、どちらが優れているということではありません。
アドバイスとフィードバックは、それぞれに役割があります。
ただ、「今、相手にとって必要なのはどちらだろう?」と立ち止まって考えること。
それだけで、言葉の持つ力は大きく変わります。
伝え方ひとつで、関係性が深まることもあれば、
距離ができてしまうこ
ともある。
だからこそ、伝える側には“意図”や“観察”
が求められます。
言葉は道具であり、贈り物でもあります。
相手のためを思って届けるその言葉が、本当に相手の役に立つように。
どんな場面で、どんな言葉を選ぶのか。
私たちは、もっと丁寧に向き合っていく必要があるのかもしれません。
言葉は、ときにそっと背中を押し、
ときにそっと寄り添う力を持って
います。
アドバイスも、フィードバックも、
大切なのは
「今の相手にとって、どんな言葉が必要だろう」と
心を澄ませることなのかもしれません。
あなたが届けたその一言が、
誰かの明日を少しだけやわらかく照らす
ものになりますように。
今日も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう!