五感でめぐる美術散歩|6月号 ― 雨を聴くアート ―

こんにちは。

一社)日本アート教育振興会の石川です

1. 季節の入り口

 

しとしと、
ぱらぱら、

ぴちゃぴちゃ、

ざあざあ、
どしゃどしゃ。

 
耳をすませば、雨音はまるでひとつの音楽のよう。

  

梅雨の到来ももう少し。
 

そんな季節には、
静けさをまとったアートに触れたく
なりませんか?

 


2. 今月の1枚:
「パリの通り、雨」/ギュスターヴ・カイユボット(1877年)

 

石畳の路面に、雨が静かに降り続ける。

しっとりと濡れた舗道。

傘をさして行き交う人々。

 

その中で、男女が相合傘で歩いている。

その女性の口角は上がっている様にも。

 

そして町を包む光に注目すると、 

濡れた石の鈍い輝きや、

曇天から静かに差し込む柔らかな光

 

その柔らかな光と、男女の距離の近さに

どこか「あたたかさ」が感じられます。

  

 

遠近法が効いた広い通りは、

どこか現代の私たちにも馴染み深い都市の風景のよう。

 

 

この絵の中では、音はあまり聞こえてきません。

 

むしろ雨音を吸い込んだ静けさ

街を包む湿り気、靴底がわずかに水たまりを踏む音。

 

「雨を聴く」というより、

「雨に包まれる感覚」に近いのかもしれない。

 

 

カイユボットの絵は、雨という日常の中にある、

ささやかな美しさをそっとすくい上げる。

 

雨の日は煩わしさだけでなく、

時間が静かに緩む贅沢を与えてくれているのだと、

思い出させてくれる一枚です。

 


3. 今月に訪れたい美術館:足立美術館(島根)

 

雨の音がよく似合う美術館がある。

 

島根県・安来市にある「足立美術館」は、
近代日本画と日
本庭園が一体となった空間美の極致。

 

 

「庭そのものが絵画である」という感覚。

 

 

雨に濡れた石、揺れる苔、滴る枝葉。

 

館内から額縁越しに眺める景色は、

まるで一幅の日本画のよう。

 

外の雨音に耳を澄ませながら、

絵の中にある雨と向き合う。

 

そんな「内と外がひとつになるような体験」ができ
る美術館だ。

  


4. 編集後記:季節の余韻とともに

 

雨の日は、つい早足になりがちです。

 

でも、ふと立ち止まると、

街は驚くほどやわらかな景色に包まれているのだと気づきます。

 

濡れた石畳、揺れる傘、静かに流れる空気——

 

アートはそんな「通りすぎる風景」を、

そっと留めてくれるのかもしれません。

 

今日も最後までお読みくださりありがとうございました。

また次の記事でお会いしましょう!

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